2012年7月1日(日)開演13:30
会場:群馬県生涯学習センター 1階 多目的ホール
’60~’80年代の懐かしいアニメソング・特撮ヒーローソングが大好きで、それが昂じて、自らもアマチュア・シンガーとして、コピーバンドやバンド・セッション、あるいはカラオケなどで、そういう歌を歌っています。そういう活動を続けているうち、ハーモニーを奏でることの楽しみにも目覚め、リードだけでなくそれを引き立てるコーラスを歌うのも好きになって来ました。
そんな風にコーラスを意識し始めると、自ずと出会うことになるのが「こおろぎ’73」と云うグループ。’70年代のアニメソングの豊饒期には、水木一郎さん、堀江美都子さん、ささきいさおさんと云った、今では“御大”として押しも押されもせぬ存在となった、圧巻のソロシンガーの方々のバックを支えていたのは、間違いなく「こおろぎ’73」でした。
しかし、私が若い頃には、そのコーラスやハーモニーの魅力には、まだ気づくことが出来ず、リードを力強く歌うソロシンガーの方々ばかりを追い掛けていました。なので、こおろぎ’73が一番活躍していた時期にはそのステージを生で拝見する機会には恵まれませんでした。
※これは、私が当時も関西に住まいしていたことも要因として大きいです。
時を重ね、それぞれの時代に大きな足跡を残すアニメ作品が登場しては、何度かのアニメブームを日本と云う国が経験していくうちに、アニメやマンガを含めたサブカルチャーの社会的位置づけが劇的に変化して行くことになり、それに伴って、アニメソングを取り巻く状況も、30数年前に私が“アニメファン”となった頃とは随分変わって来ました。
そんな状況の中で、’70年代を彩ったアニソンシンガーの方々が、いつしか新しいアニメ作品の主題歌に起用される機会が徐々に少なくなり、それと歩調を合わせるかのように、「こおろぎ’73」の名前を耳にすることも少なくなりました。
アニメソング・特撮ソングを歌う活動を通じて、自分が愛して来た昔の歌を深く知って行くに従って、こおろぎ’73の魅力をようやく認識することとなりました。しかし、皮肉なことに、その魅力を理解できるようになったその時に、一番活躍していた時代に出会えていなかったことが、とっても口惜しく思えました。
また、世代的にも、こおろぎ’73のデビュー曲である「花咲じいさん」がサントリーレッドのCMソングとしてTV放送されていたのを、私はリアルタイムで聴いていました。さらに、昔のCMソングが大好きな私は、そのシングル盤を中古レコード屋で見つけ出し、その楽しい曲を何度も聴いてますますこおろぎ’73が好きになって行きました。
そして、アニソンのコーラスを歌うのが好きな仲間と一緒に、こおろぎ’73が歌った楽曲を再現しようと、コーラスを歌うと云う活動も始めました。そうやって、コーラスを歌うことにハマって行くのに比例して、こおろぎ’73のメンバーの人達に逢ってみたい、そしてその歌声を聴かせてくれたことに感謝し、ファンの端くれであることを伝えたいと云う想いが、ズンズンと募って来ていました。
そんな折、何と、こおろぎ’73のメンバーだった3人の方々にお会いすることが出来る!と云う話が飛び込んで来ました。これは、もう、何を置いても、その場に馳せ参じるしかありません!
こおろぎ’73のファンとしては、長年に亘って応援なさって来たファンの方々からすれば、私などは まだまだ“にわか”に近い、駆け出しのファンにしか過ぎません。
それでも、私なりに積年の想いを持って、今回の「今人HAPPYokai」の観覧に臨みました。
「今人」の皆さんが演奏される曲は、フォーク、GS、歌謡曲、ビートルズと、’60~’70年代の日本の音楽シーンを彩った懐かしい曲が中心でした。私自身としても、この頃の歌に共感を覚えるものがあり、どの曲も懐かしく聴かせていただきました。
ここで、リードを主に歌っているのは、あの岸さんなのですが、まだ頭の中では、こおろぎ’73のメンバーのお1人と云う印象が、なかなか像を結んでくれません。その辺が、私の“にわか”たる所以かも知れません。そして、いよいよ訪れる、こおろぎ’73のメンバーだったお3人の方々の揃い踏みです。ここで一気に、ヒートアップ! やはり、さとさんの存在は大きいです。
私は、故あって、山本正之先生の作・演出による「游ぎつづけてビリジアン」と「そよ子のスタイルブック」と云う2つの戯曲が、10数年前に高田馬場にあった「ぷろだくしょんバオバブ」のスタジオで上演された折に観に行く機会を得まして、その際に役者として出演なさっていた さとさんを拝見していたのです。
また、その山本先生とのご縁で、2009年4月24日に開催された「BS永遠の音楽アニメ主題歌大全集」の公開録画収録(放送はNHK衛星第2(BS-2)にて5月2日(土)午後8:00~10:00でした)にも、さとさんがゲストとしてご出演になり、「おじゃまんが山田くん」を山本先生と一緒に歌ってくださいました。その公開録画収録も、私は渋谷のNHKホールに観に行っておりまして、かなり遠くからでしたが、さとさんが歌っているご様子を生で拝見ることができました。そんなこともあって、こおろぎ’73の現役時代ではありませんでしたが、唯一私が生でお姿を拝見したことがあったのが、さとさんでした。私が一方的にお姿を拝見していただけでしたが、それでもやはり、さとさんと再会できたことは、私にとっては興奮を抑えられないものがありました。
往時のとおり、見事なまでに流暢にMCで話されるさとさんのご様子を拝見できて、「あー、やっぱり、こおろぎの皆さんを生で拝見できる場所に来ているんだぁ」と云う想いが沸々と湧いて来ました。
「こおろぎの3人が歌うとなったら、何を歌ってくれるんだろう?」と期待しながら曲目の紹介を待っていると、何と!、『巨人の星』のOP「行け行け飛雄馬」と、『宇宙戦艦ヤマト』の同名OPです。前者は、『新・巨人の星』のOPで使われた時に、ささきいさおさんと一緒にこおろぎが歌っていたから、まぁ“アリ”な選曲ですが、後者はこおろぎが歌った楽曲じゃないからなぁ、と、私の中ではちょっと「?」な感じでした。
まぁ、こおろぎが好きな人達は、もちろんアニソンが好きなんだろう、だから多少マニアックな曲を据えても全然問題ないのでしょうが、周りにいらっしゃる一般のお客さん(多くは出演者の関係者だと思いますが)にも、ちゃんと伝わるように、と考えると、できるだけポピュラーで知名度の高い曲を選曲なさったんでしょうね。
さとさんが、「この曲は、Sing Out と云うことにしますので、歌える方は一緒に歌ってください」と、観客に参加を求めました。そのうえで、ステージから降りて来たかと思うと、最前列に居た、私たち・こおろぎファンの列に、マイクを向けてくださいました。こういう場で歌えるとは思ってもみなかったのですが、さとさんが振ってくださったこの機会に、歌えるのはとってもありがたいことです。ここぞとばかりに、思いっきり歌わせていただきました。
その後、アンドレ・カンドレ(現・井上陽水)の「帰れない二人」、Carole King の「You’ve Got a Friend」など、フォーク系の国内外の名曲を披露してくださいました。こういう展開になって来たので、「こおろぎのコーナーもこれで締めってことになるのかなぁ」と思っていたら、さらにアニソンのレパートリィを何曲か聴くことができました。
まずは、ムード歌謡の雰囲気が漂う「元祖天才バカボンの春」。歌い出すところの拍が違っていたのは、さすがに久しぶりに歌ったからなのでしょうが、この曲はこおろぎだけの歌唱でしたからね。こういう曲を歌ってくださるのは、とっても嬉しいです。
続けて「♪バンバラバンバンバン」と歌い始めたので、てっきり「秘密戦隊ゴレンジャー」を歌ってくれるのか?と思ったら、そこのスキャットだけで終わりました。これも盛り上がって楽しい曲なのですが、この曲は、ささきいさおさんがリードを歌って成立する曲ですからね。
そして、こおろぎが歌った曲の中で、世間一般にも(当時は)知名度が高かった「がんばれドカベン」です。私が初めて、TVでこおろぎの姿を拝見したのが、『家族対抗歌合戦』だったのですが、その時の登場の時にも、この曲を歌って出て来たのを思い出します。
続いて、子ども番組『それゆけバンバン』のテーマソングですが、サビの部分だけで終わってしまいました。短かったのと、ハーモニーが最初ちょっと合っていなかったのとで、歌い直してくださいました。と言っても、あくまでサビの部分だけでしたが。
次に津島さんがリードを取って「さいしょのパンダはくろかった」。最後の「♪飲んでるかい?」と云うところを、津島さんは可愛らしく歌ってくださいました。
こおろぎのコーナーは、ひとまずここまで。この後、さとさんの紹介で、若いヴァイオリニストの女性お2人がステージに呼び込まれて、二重奏を聴かせてくれました。
この2曲が終わって、また「今人」の演奏に戻ります。後半は、歌謡曲、ビートルズ、GS、ベンチャーズなど、昭和を生きた世代ならではの懐かしい曲が、ポンポンと飛び出して来ました。やっぱり、私にとっては耳馴染みのある曲ばかりです。
ラストは、やはり私たちにサービスとして演奏してくださったのか、世間一般にもとっても認知度が高い、TVアニメ『タッチ』の同名主題曲をご披露くださいました。これはインストゥルメンタルの演奏のみで、歌唱はありませんでした。
それで終わりかと思ったのですが、そこはやはりアンコールのリクエストをしないわけにはいきません。最後に、こおろぎのお2人も加えて、オールディーズの名曲「Diana」を披露してくださいました。この曲は、こおろぎの時代にはステージで歌うことが実現しなかった曲だそうです。岸さんが歌とアコギ、さとさんがコーラスとアコギ、津島さんがタンバリンとコーラスと云う形で、今人の演奏に混じって演奏なさいました。
総じて、そんなに長い時間ではなかったのですが、こおろぎの3人がステージに立って歌われる姿を、生で観られたと云うことで感無量でした。この場に居合わせられたことが、なにより幸甚です。
今人の皆さん、ノーギャラでご出演くださった さとさん・津島さん、そして今回一緒にこのステージを観覧なさった皆さん、お疲れさまでした。そして、こういう機会に巡りあわせていただいて、ありがとうございました。